20210630

ここ何ヶ月かログアウトしていたTwitter

久々に開いてみて早々、嫌なもの見ちゃったな。

 

揉め事、というか、荒れ事、というか。

 

人の敵意、というのは、どうしてこうも敏感に感じ取れてしまうものなのでしょうか。

 

政治的な話題やジェンダーの話題を取り扱ったニュース、そうした話題に言及した有名人のツイート、そういったものに必ずと言っていいほどくっついている、敵意を孕んだリプや引リツ。

 

そういうの見たくなくてログアウトしてたんだった。

 

ほんとはしたくなかったんだけど。

 

一度倒れちゃったもので。

 

僕は人の敵意(に限らず、感情的なもの全般そうなのだけど)を必要以上に身体の中に取り込んでしまうきらいがあるらしく、

しかも、それには致死量みたいなものがあり、

このコロナ禍、日々荒れるTwitter

鬱の加速、不眠、結果、倒れて、緊急搬送。

 

逼迫する医療機関にさらに迷惑をかけてしまって、

申し訳なくて申し訳なくて、死にたくなった。

 

それ以来、出来るだけTwitter、というか、政治的な話題やジェンダーの話題なんかを遠ざけて生活してました。

 

本当はちゃんと向き合いたいし、向き合うべきなんだと思うし、そういう話題を避けてある程度平穏に生活できてしまうこと、それ自体が僕の持つ大きな特権で、それを享受してしまっている自分に腹が立つし。

 

ただやっぱり、このご時世だし、もっかい倒れて医療機関に迷惑かけてしまうのは嫌だなぁとも。

正直じぶんの身体なんてどうでもいいんだけど、それだけが。

 

むずかしい。あー。

あらためて

家から電車で2、3駅のところにある、十三(じゅうそう、と読む)という街に行った。

電車に乗りたい気分だったのと、行きたい喫茶店を見つけたので。

 

だけど着いてみれば喫茶店は閉まっていて、

しょうがないのであてもなく、

別の喫茶店を求め散歩していたらゲリラ豪雨

 

十三、たまに行くといっつも雨が降ってる気がする。

おかげで十三は雨の街、というイメージ。

 

ただ、十三ってそんな広い街じゃなく、

十三に雨が降っているということは、

大阪市に雨が降っているということで、

そう離れていない僕の住む街にも雨が降っているということで、

つまり、たまたまなんだろう。

 

それなのに十三は雨の街、なんて、少し申し訳ない。

 

ただ、誠に勝手ながら、

雨、似合うよなあと思う。

 

晴れの日の十三も知ってるはずなんだけどな。

というか、なんなら住んでたこともあるし。

 

だけど記憶の中の十三はやっぱり雨が降っていて、

飲み屋が雑多にひしめく細い裏路地の、

コンクリートで固められた地面は所々窪んでいて、

そこにできた水溜りを打ちつける無数の雨粒と、

それを避けるように行き交うまだらな人。

 

裏路地を抜けた先には開かずの踏切があって、

せきとめられた人、自転車、車の波。

交通ルールなんて存在しないかのように入り乱れて

窮屈そうに開かれたビニール傘たち。

 

それが雨の街、十三のイメージで、

そんな光景を思い出しては、

結構好きだなあと思う。

 

ただ、十三は別に雨の街でもなんでもなくて、

それは、好きでいる態度として、どうなのかなあ、とも思うのだ。

 

結局マックに入りました。

それと

過去のツイートを、ぜんぶ消しました。

特に意味はないです。

 

人は日々たくさんを忘れてゆくものだし。

特に意味もなく。 

ツイートもその一つにしました。

 

それに、

忘れることと失うことは違う、

ということを僕は知っている、ような気がする、し。

 

とはいえ、

見返したら消すのが惜しくなってしまいそうだったので、

一思いに。

20210629

ふと周りを見渡したら、あふれんばかりのモノ、モノ、モノ。

 

ただ生きてるだけで目が、耳が、勝手に拾い上げる情報、情報、情報。

 

過剰摂取。煩雑で窮屈。

 

ちょっと疲れちゃったな。

 

しばらくtwitter辞めてます。

光線

十年前のあの夜、携帯のライトをふと上へ向けてしまったことを、僕は忘れられないでいる。

 

光線は上空へと昇り、この星を抜け出し、それでもなお、自ら止まることも、消えることもできず、どこに辿り着くこともできないお前は、今頃どこを進んでいるのか。終わりのないお前の旅路には、もちろん半分だとか、三合目だとかいった概念すらもなく、どこまで進もうとも、それはどこにも進んでいないのと同じであり、それがつまり、永遠という檻なのであろう。

 

夜、寝転がって上を向くとお前のことを思い出す。今もなお、この宇宙のどこかで永遠に囚われたままのお前の姿が、まるで自分自身の行く末のようで眠れなくなる。僕は、いつまで僕で在り続けるのだろうか。死は、果たして終わりになり得るのだろうか。一億年先にも、明日があることを思う。部屋の角から、雨漏りのように永遠が染み出してゆく。永遠は部屋の底に溜まり続け、徐々にその水位を増し、やがてこの部屋を満たしてゆく。僕は息ができなくなる。嫌だ。死にたくない。死にたくない。

 

手を上へと伸ばしてみる。この手だ。この手が永遠を産み出したのだ。光線の姿をした永遠を。それは、この手に抱えるにはあまりにも重いものであった。

 

 

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手のひらを合わせて宙に浮きたい

ふたり、向かい合った状態で、互いに右手を差し出す。地面から垂直になるように、そっと、手のひらを合わせる。右に、左に、ななめに、手のひらを動かしてみる。すると相手の手のひらも、はがれぬようについてくる。あるタイミングで、相手も手のひらを動かしはじめる。右、左、ななめ。僕の手のひらが、相手の手のひらについていく。また僕が動かす。そして相手が動かす。僕が動かす。相手が動かす。それを何度も繰り返していくうちに、不思議と、今どちらが動かしているのかわからなくなる。

 

昔やったことがある。手のひら遊び、と呼んでいいのかはわからないけど、とりあえずそう呼ぶことにする。僕はこの手のひら遊びについて、思っていることがある。

 

それは、この手のひら遊びの途中で、ふと、何かの拍子に、手のひらが上へと昇ったらどうなるだろうか、ということだ。もはやどちらが動かしているのかもわからない状態で手のひらが上へと登るのは、僕の意思でも、相手の意思でもない。人の意思の介在しない、不思議な力、としか呼びようのない力で、手のひらが上へ上へと吸い寄せられる。もはや止めることなんてできずに、ただ身を任せる。まず、腕が伸びきってしまうだろう。次に、背筋も伸びきってしまうだろう。そして爪先立ちをするのだ。だけど手のひらはまだ止まらない。すると、どうなるだろうか。

 

そう、浮くのだ。

 

ふたりのつま先は地面を離れ、ふたりの身体はふっと、宙に浮くのだ。

 

わかっている。僕たち人間は、宙に浮くことはできない。僕たちに翼はない。どれだけ助走をつけて地面を蹴ろうとも、3秒後には再びよく見知った地面を踏みつけていることだろう。なぜならそこにあるのは、「浮こう」という意思だけだからだ。意思じゃ科学は超えられない。だけど人の意思の介在しない、不思議な力ならどうだ。科学じゃ説明のつかない不思議な力なら、科学を越えられるんじゃないか。きっとそうだ。不思議な力を見にまとった僕たちは、宙に浮けるのだ。僕は真面目にそう信じている。そして、真面目に実験がしたい。

 

問題はその相手だ。手のひら遊びはひとりではできない。相手がいる。そしてその相手は誰でもいいわけじゃない。人類史を覆すかもしれない、一世一代の、世紀の大実験だ。誰でもいいわけがない。

 

僕は、君と実験がしたいんだ。

 

ずっとずっと好きだった君と。笑うとき、少しだけ右の口角が上がる君と。

 

ふたりとももういい大人だ。こんなことをやってる場合じゃない。もう何年地に足をつけて生きてきたんだ。でも、だからこそ君とやりたいんだ。大の大人がふたり、揃いも揃って「きっと宙に浮けるはずだ」なんて、馬鹿なことを信じて実験するんだ。

 

それが僕の唯一の願いだ。ずっとずっと君を好きだった僕の、たったひとつの、切実な願いだ。

 

キスだとかセックスだとか、そんなことはしなくていい。大人になってしまった僕たちはもう、それらを、そんなこと、と言ってしまえるくらいに知ってしまった。好きじゃなくたってできてしまうことも、始まった瞬間に終わりを感じてしまう、永遠とは最もかけ離れた行為だってことも。だからこの実験は、そんなものよりもずっとずっと価値があるんだ。なぜなら僕にとっても君にとっても、こんな実験をするのは、一生に一度きりのはずだからだ。そしてこんな実験をするのは、世界中で僕たちふたりだけのはずだからだ。この実験の結末は、僕にも、君にも、世界中の誰にもわからない。結末のわからないこの馬鹿げた実験にこそ、大人になってしまった僕たちが手に入れられる、唯一の永遠があるんだ。

 

さあ、実験をしよう。意を決して「手のひらを合わせて、宙に浮かない?」なんて誘ってしまおう。最初は君も馬鹿にするだろう。「何言ってるの?」って。「そんなことできるわけないじゃん」って。だけど僕は負けずに力説するんだ。「ふたりなら、きっと浮けると思うんだ」って。そしてそのあまりの熱量に、君も不思議と「もしかしたら本当に浮けちゃうかも」なんて思いはじめるんだ。

 

決まりだ。さあやろう。どこでやるのがいいだろうか。人気のない公園だろうか。君の部屋はどうだろう。部屋だ。部屋がいい。なんだか秘密の遊びっぽい。いや待てよ、もしも浮けた場合、天井があるのは危ない。なぜなら君の部屋は天井が低いからだ。「ぶつかったら危ないから外に出よっか。」なんて、大真面目に言ってしまおう。

 

アパート前の駐車場に出る。人気もなく、車もほとんど止まっていない、夕暮れ時の駐車場だ。夏の乾いた風がそっと葉を揺らしている。いよいよ実験の時だ。言葉は交わさない。「じゃあ、いくよ?」「うん」それだけだ。

 

そっと手のひらを差し出す。西日に照らされたふたりの手のひらが、ぴとっと合わさる。手のひらで繋がったふたりの影が長く伸びる。恐る恐る、手のひらを動かしてみる。右へ、左へ、ななめへ。君の手のひらがついてくる。初めはひたすらに僕が動かす。だけど意を決したように、君もひとつ息を吸って、手のひらを動かしはじめる。心臓が、とくんと大きく跳ねるのを感じる。君もこの実験に参加しているんだ。君も、僕と宙に浮く未来を想像しているんだ。

 

そしてついに、ふたりの手のひらが、上へと昇りだす。心臓が再び大きく跳ねる。ふたりの腕が伸びていく。僕が持ち上げているのか、君が持ち上げているのか、僕にはもはやわからない。いや、これこそが不思議な力だ。これから僕たちは、浮くんだ。まるで宙に誘われているかのように、手のひらが持ち上がっていく。ふたりの腕が、ぴんと伸びきる。早くなる心拍数が、手のひらを伝って君に届いてしまいそうだ。少しずつ、少しずつ、手のひらがまた宙へと近づく。ふたりの背筋が限界まで伸びきる。ふたりの間に、どれくらいの時間が流れているのだろうか。相変わらず西日は君の横顔を照らし、風は葉をなぜている。それは、人から見ればほんの一瞬なのかもしれない。だけど今ここには、確かに永遠がある。僕の待ち焦がれた、ふたりの永遠がある。とうとう爪先立ちになる。もう少しだ。もう少しで、手のひらが、最高点へと---

 

たどり着いてしまう。

 

---いよいよ西日が眩しくなってきた。目の前にいるはずの、君の姿がぼやけて見える。あれ、これは記憶の中の君だっけ? ねえ。ねえ、聞こえてる? ねえ、どうしてなの? あの夜、どうして君は行ってしまったの? 月の形や、街灯の明かりだって覚えているのに、最後に見た君の顔だけが思い出せないんだ。「バイバイ!」と叫んだ君の声が、震えて聞こえたのは気のせいなの? 本当は何か言いたいことがあったんじゃないの? 涙の訳を、話さなきゃいけなかったんじゃないの? 僕はどうしたらよかったの? 君の元へ駆け出していたら、何かが変わったの? あれから時間が経って、僕は今、君と手のひらを合わせて宙に浮きたいだなんて、そんなことを考えているよ。寝転がって天井を見つめれば、黒い線が這って見えるんだ。いくつにも枝分かれして、だけどそのどれもが、途中で途切れてしまうんだ。夏の公園、月の夜、眠るシーソー、街灯に照らされる、中途半端に日焼けした肌、揺れる髪、笑い声、ねえ、僕たちは最後に、どんな話をしたんだっけ。ねえ、行かないで、行かないでよ。不思議なんだ、君がいなくなって、僕は夢と現実の区別さえつかなくなって、それでも日々は回っていくんだ。ねえ、僕は今でも、君のことが好きだよ。ねえ、どうしてあの時、あの時、、、君は僕に、本当はどうしてほしかったの? いよいよ手のひらも最高点だ。わかってる。本当は最初からわかってるんだ。こんなことしたって宙には浮けない。浮けるはずがない。だけどそんなことはどうだっていい。どうだっていいんだ。

 

 

 

 

前夜

テレビを流れるニュースは言う

この街は、明日から緊急事態なのだとか

逆に言えば、今はそうではないのだとか

 

いくつもの夜がそうであったように

この夜だって僕たちを僕たちのまま

明日へ運んでくれるはずなのに

0時を境に何が変わってしまうというのか

 

まるで賞味期限の切れるミルクを

前にしているような夜だ

 

だけどそんなことは知らぬ顔で

明日はやってくるのだろう

それがお前の強さだと知りながら

この夜の越え方を僕はわからないでいる

 

目を離してしまえば

その隙に何かが決定的に変わってしまいそうで

胸にミルクを抱えたまま

いつまでも眠れずにいるのだ