夜は水

葉を落とした街路樹の足元に

綺麗な鱗を見つけんたんだ

きっと夜は水で

この辺りには魚が泳いでいる

 

それは遠い昔に絶滅した

誰も知らない無名の魚で

さみしい人のそばで尾ひれを振りまいて

鱗を一片落とすのさ

 

夜の街を歩いていたら

知らない場所にたどり着いたんだ

きっと夜は水で

この辺りには絶え間ない水流がある

 

それは始まりも終わりもなく

決して淀むこともない水流で

さみしい人はちょっと軽いから

勝手にどこかへと運んでくる

 

夜は少し冷たくて

どこまでも透き通っている

確かな肌触りを感じるが

決して掴むことはできない

きっと夜は水で

さみしい人をゆらゆら揺らすのさ

 

 

f:id:ohbayuki:20210105195229p:plain