夜を流れる

寝転がってシーツの皺を数えては

寝返りを打ってまた数えなおす

 

ゆらゆら揺れる独り寝のベッドは

川を流れる小舟です

 

夜には世界中の独りぼっちが

ランタンひとつ載せた小舟に揺られて

東の海へと流されてゆく

 

たまに灯りが消える舟もあるが

決して話しかけはしないのさ

ひそひそ声が届く距離でもないのだから

 

薄れゆく意識の中でふと目をやれば

水面に立つあなたの影

手を伸ばしてみるも

あなたは僕に背を向けて

川岸の方へとそっと歩き出す

 

川岸には何やら楽しげな光が灯っていて

あなたの影を飲み込んでいく

目を凝らしてよく見てみれば

それはいつかの幸せな思い出です

 

追いかけようにも

なにせ臆病な僕だから

舵を取ることもままならず

小さな境内の夏祭りみたいな光の粒は

西の空へと置き去られてゆく

 

夜はどこまでも一方通行な川の上

風に吹かれるばかりの僕らだ

ならば水面に映る月の光を

ひとつ掬い上げ帆にしよう

風を受け、せめて朝まで辿り着けるよう

 

 

f:id:ohbayuki:20210105195839p:plain