夜を流れる
寝転がってシーツの皺を数えては
寝返りを打ってまた数えなおす
ゆらゆら揺れる独り寝のベッドは
川を流れる小舟です
夜には世界中の独りぼっちが
ランタンひとつ載せた小舟に揺られて
東の海へと流されてゆく
たまに灯りが消える舟もあるが
決して話しかけはしないのさ
ひそひそ声が届く距離でもないのだから
薄れゆく意識の中でふと目をやれば
水面に立つあなたの影
手を伸ばしてみるも
あなたは僕に背を向けて
川岸の方へとそっと歩き出す
川岸には何やら楽しげな光が灯っていて
あなたの影を飲み込んでいく
目を凝らしてよく見てみれば
それはいつかの幸せな思い出です
追いかけようにも
なにせ臆病な僕だから
舵を取ることもままならず
小さな境内の夏祭りみたいな光の粒は
西の空へと置き去られてゆく
夜はどこまでも一方通行な川の上
風に吹かれるばかりの僕らだ
ならば水面に映る月の光を
ひとつ掬い上げ帆にしよう
風を受け、せめて朝まで辿り着けるよう