夜になると僕は

夜になると僕は、星を作って遊ぶのです。夜空にペンを走らせて、銀のインクで星を結ぶのです。あなたのことを想いながら、星を結ぶのです。初めて星座をつくった天文学者は、何色のインクで星を結んだのだろう、どうして星を結びたかったのだろう、そんなことを考えながら、僕は星を結ぶのです。

 

だから朝になると僕は、立ちぼうけになってしまいます。太陽が、僕が作った星座を地に落としてしまうのです。僕はその中から水瓶座を探します。中に入った水が日差しで乾ききってしまえば、もう二度と夜が訪れないような気がして、僕は手のひらに水を掬うのです。コップに注いでもすり抜けてしまうので、僕はお椀状に形作った手のひらに水を貯めて、必死に日差しから隠れるのです。

 

やがて夜になると僕は、手のひらの水を空に振り撒くのです。街の光を反射して、飛沫がきらきらと光り、その様子はまるで星のようだと思いきや、ほんとうの星が現れているので、僕は再びペンを走らせて、星を結ぶのです。あなたのことを想いながら、星を結ぶのです。あなたはとてもきれいな指をしていましたから、きっとペンなどは使わずとも、その指先で星を結べてしまうのでしょう。そんなことを考えながら、僕は星を結ぶのです。

 

 

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